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松田正久男爵家 

◆松田正久●子供ナシ
1845-1914 弘化02-大正03


■妻 鮫島静子
明治03-





◆松田正之
1892-1976 明治25-昭和51
もと有馬頼万伯爵の子 定之助
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■妻 蜂須賀正韶侯爵の娘 笛子
1898-1937




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枢密院議長 倉富勇三郎男爵の日記 大正08年01月21日

*倉富は松田正之の実家有馬伯爵家の相談役を務めていた。

有馬頼寧伯爵〔松田正之の兄〕より
「松田正之の結婚を蜂須賀よりしきりに申し込みに来る。
松田の未亡人〔静子〕の性行が普通ならざるゆえ
充分に聞き質したる上に決心せられたき旨を蜂須賀に申し向けおきたる」ことなどを話せり。


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倉富日記 大正08年06月27日

松田正之の台詞

自分も寡婦〔静子未亡人〕も結婚して異存なきにつき
今日電話にて結納の事等しかるべく取り計いくれたき旨を依頼したるところ、
頼寧は「有馬家にて嫁を貰う訳にあらざるゆえ、
正之と寡婦と相談してしかるべく取り計いたらばよろしかるべし」と言えり。
左のごとき返答はすこぶる意外なりしも、ともかく寡婦に対し頼寧の返答とは言わず
「松田家の結婚なるゆえ第一に寡婦の希望を聞きたし」旨を話したるところ、
寡婦は「このことは万事頼寧に依頼すべき」旨を告げたり。
やむをえず頼寧の返答を言いたるところ、
しからば結納はこちらにて取り計うことにして差し支えなし。
その費用は自分より半分出すにつき、正之より半分を出すべし。
先年有馬秀雄〔有馬伯爵家職員〕より正之の住居は有馬家にて設備し
生計費も有馬家にて支弁すべき事を申し出ており。
かつ自分と正之と別居することは頼寧よりも希望の一条件として申し出ておることにつき、
別居と言う以上はその家は有馬家にて設備するが当然なり。
よりて家と生計費の事はこの際是非とも有馬家にて引き受けることに相談しおかざるべからず。
もし引き受けざるならば自分にも考えあり」と言えり。自分の考えにては
寡婦の希望のごとく有馬家にて引き受けてくれるならば結婚問題を進行してもよろしきも、
もしその事が出来ざるならば結納を済まさざるうちに結婚話を止むる方がよろしからん。
しからざれば処置に困ることとなるべし。よりてこの事につき頼寧に相談してくれよ。


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倉富日記 大正08年06月29日

有馬頼寧の台詞

結納ぐらいは松田家にて取り計いてよろしからんと思い、
その趣旨を電話にて正之に答えたるまでにて、
絶対世話せざる趣意にあらず。自分と蜂須賀との間には既に相当の黙契あり
正之の生計費を幾分にても寡婦より出さしめんとすれば
寡婦が承諾せざる事は初めより分かりおるにつき、左様の事は少しも考えおらず。
正之には自分の考えは既に話しおきたることあるにつき、
左様の誤解をなすべきはずはなきことなり。


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倉富日記 大正08年08月01日

倉富&蜂須賀正韶侯爵の会話

蜂須賀◆末広重雄〔京都帝大法学部教授〕は宇和島の人にて伊達家に関係あり。
末広の話に松田の未亡人は極端なる性行なるように言うとのことにて懸念なきにあらず。
種々の話を総合すれば結局未亡人は利欲の念の強き人のようなるがいかが。
倉富◆予はこれまで一回本人に面会したるのみにてこれを批評するは不都合なれども、
要するに利欲心の強き人のようなり。本人は実子ある訳にあらず。
ただし相当の資産もある模様につき、この上にそれほど金銭を欲する原因は了解しがたし。
蜂須賀◆本人より伊達宗曜男爵に対し嫁の候補者なきやと言いたる由。
これは松田正久の親族某の嫁を探すためなるようなり。
未亡人が金を蓄えるは、この某に贈与するためならんと思わる。
倉富◆松田正久の存命中いったん実子として入籍しおりたる者を
戸籍の誤りなりとて裁判上の手続をなし除籍したるが、
その原因は未亡人がその人を嫌いたるためなるように聞きおれり。
かの人の心理状態は何とも判断できがたし。
有馬家と未亡人との間は非常に激しき衝突を起こしたることあり。
原因は未亡人より某家に対する負債あり、
これを返済するため有馬家より出金してくれよとの相談あり。
しかるに負債なき事実明瞭となり有馬家はその請求に応ぜざりし事よりの紛糾にて、
結局女の浅薄なる考えと言う他なし。
蜂須賀◆有馬家より持参の5万円と御下賜の3万円とを正之の有となしたらば
ともかく生計を立つることを得るならんとの話をなしおりたることあるも、
3万円はもちろん5万円を取り戻すことも容易ならざるべし。
頼寧より松田のために邸宅も設けざるべからずとの話ありたるも、
自分は左様のことは如何様になりても頓着せず。
娘にも出来得るだけその辺の覚悟はなさしめおるつもりなり。
倉富◆有馬家としてもすぐに松田のために建築する様の事は事情できざるべく、
もし只今の住居にて間に合わざるならば当分借家でもせざるをえざるべし。
蜂須賀◆それにて結構なり。
倉富◆正之が選定相続をなし、麻布の邸宅は正久存命中より妻の所有となりおり。
正之には何も相続すべき財産なし。
蜂須賀◆頼寧が「蜂須賀より持参する金ありてもその金額等は未亡人に明かさず、
元資は蜂須賀家に留め置き利子だけを正之に渡してくれる方が好都合なり」との話しあり。
その事にいたすつもりなり。


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倉富日記 大正08年09月13日

倉富&有馬伯爵家職員橋爪慎吾の会話

橋爪◆寡婦は正之に対し「お前の住居は頼寧が引き受けらるるゆえ、
まず家を買いたるうえ結婚することにならざるべからず。
家を買い入れるまでは婚期を定むべからず」という趣なり。
倉富◆松田にては住居のことも生計のこともすべて有馬家に一任し寡婦は何も世話をなさずに、
家を買うまでは婚期を定めずとはあまりにワガママなる申し分なり。
予は頼寧より充分寡婦に交渉せられ
一切干渉がましきことをなさざる様取り決めらるる必要あると思う。
橋爪◆寡婦より正之に対し「蜂須賀より持ち来る嫁装はすべて松田家へ運び入れ、
入用の分だけ新夫婦の住居に持ち行く様にせよ」と言いたる。
倉富◆言語道断なり。左様の事をなしたらば品物はすべて寡婦が差し押さえることとなるべし。
左のごとき事を言うならば、なお一切の干渉を途絶しおく必要あり。
橋爪◆正之の持参したる公債証書5万円は既にこれを売却して株券を買入れ
配当金1万5000円は収入とすることとなりおれり。「正之が寡婦に対する行動よろしければ
その資産は正之に譲るも、さもなければ他に遣わす」と言いたる。


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倉富日記 大正08年09月18日

倉富&蜂須賀正韶侯爵の会話

倉富◆先日橋爪より松田の寡婦より家買入れのこと、
嫁装を松田家に運び入れること等の注文をなす趣を聞けり。
蜂須賀◆娘に対しても寡婦の性行が普通ならざるゆえ
何事も軽率に言わず夫婦の間の意思の齟齬せざる様に注意すべきことを訓示しおけり。


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倉富日記 大正08年10月06日

倉富&宮内大臣波多野敬直子爵の会話

倉富◆蜂須賀正韶はいかなる事より娘を松田に嫁せしめる事を考えたるや。
なかなか熱心にて予にも会いたいと言い、面会のうえ種々話をなしたり。
波多野◆初めは末広重雄より蜂須賀に話して、蜂須賀もこれを思い立ちたる訳なり。
山本達雄が「松田の寡婦は実に困りたる人なり」と言えり。
倉富◆先頃も松田の婚儀につきちょっと面倒なることありたり。
波多野◆松田の家のことは蜂須賀の方にては「家は自分の所にもあるゆえ、
そこに住ましめてよろし」と言いおりたるところ、石井為吉は「家までも蜂須賀の物に住みては
蜂須賀の養子になりたる様になるとて寡婦が承知せざりし」と言えり。


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倉富日記 大正09年08月20日

松田正之の台詞

先日自分官を辞する時、
君〔倉富〕より「官を辞したらば家計に不足を生ずることなきや」と言われ、
その時は「家計には差し支えなし」と妻が言うにつきその旨を答えおきたる所、
その後毎月不足を生じ、妻は「自己の不行届きゆえ実家より補助を受けることとすべし」と言うも、
それにては有馬家の面目にも関する事と思い先日有馬家に対し補助の増額を求めおきけり。
これまでは年額600円、
今年は妻が出産するゆえそのための費用を請求して400円を補助する旨通知来りおれり。
よりてその他に500円を増して総額1500円と致したし。

全体有馬家より自分に対する態度についても了解しがたきこと少なからず。
安藤信昭〔兄〕に対しては資産として10万円を分与し家屋代として5万円を与えたるに、
自分には資産は5万円にて家屋代は1万円なり。
兄弟の別あるにしてもせめて家屋代は安藤の金額ぐらい与えてもよろしかるべきはずなり。
久米子〔妹〕が結婚するについても持参金3万円を遣わしなおその後の補助もなしおり。
頼寧は貧児救済とか貧民教育とかに金を費し新聞などもこれを称賛しおれども、
弟に高等貧民ありて生活もできずと言うては兄の面目にも関することと思う。
蜂須賀より妻の出産に要する衣類・器具等はすべて遣わしくれたり。
蜂須賀より厚くしてくれるだけ、自分としては有馬家の薄遇に対する不平あり


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倉富日記 同日

倉富&橋爪慎吾の会話

倉富◆先年頼寧が正之と寡婦との不和を仲裁したる結果、正之が持ち行きたる
公債証書5万円のうち2万5000円の利子は寡婦が受け取る事となりたるにつき
有馬家よりその金額だけは補助するが当然なるべし。
しかるに1250円を補助せず600円を補助する事となしたるは如何なる事情なりしや。
橋爪◆家を買うまでは正之1ヶ月50円の家賃を要したるゆえ、
600円以上は家賃と差し引くべくものとして600円と定めたり。
倉富◆それは無理なるべし。以前は家賃を払いたるにしてもその時は単身なりしが、
この節は配偶者もできたるゆえ家賃と差引勘定する訳にはいかず。
今年は正之の希望通り1500円を補助し、来年よりは1250円を補助せらるる様取り計いを望む。
橋爪◆自分も持参金5万円の利子に相当するだけは補助せらるるが穏当なりと思う。


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倉富日記 大正10年02月24日

橋爪慎吾の台詞

正之が家を買入れられたる時、1000円の余金あり。これにて応接間を作られるはずなりしが、
その時は正之は「応接間は強いて作るに及ばず。その金にて電話を買い、
その他にも必要なる事あるにつきその方に使いたし」との話あり、これを費消せり。
しかるにこの節に至り舅蜂須賀正韶が松田家に行き
「空地もあるゆえ応接間の一つぐらいはありたし」と言いたるより、
これを作る希望を起したる模様なり。
正之より「有馬家にて500円ばかり貸しもらいたし」との話なり。


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倉富日記 大正11年09月09日

松田正之の台詞

現住居は狭くして不便なり。
既に2人の子を喪い書生を置けば病気に罹り、ともかく面白からざる事多し。
妻は家の門が鬼門に当るとの事を聞き神経を悩ましおるにつき住居を変更したし。
しかるに現住居を売却したるだけの金にては他に家を買入れる事できざるゆえ、
有馬家にて家を買いその所有はもとより有馬家の物と為しおきてよろし。
無料にて自分の住居に充つる事にいたしたし。

俸給1600円・利子3750円・実家の補助1250円、計6600円なり。
無事の時なればこれだけににて間に合わざる事なし。
ただし妻は何も買う事を得ず。気の毒なり。妻は先頃より神経衰弱にて微熱あり。
小田原の蜂須賀の別邸に妻の妹小枝子が転地しおるにつき、妻もその方に行きおれり。
しかるに鎌倉あたりに移る事にいたしたしと思いおる所なり。


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by oMUGIo | 2005-07-10 00:00 | 勲功華族
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