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朝融王 その3

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倉富日記 大正13年08月17日

国分三亥
朝融王の婚約解除は徳川頼倫が引き受けおるも少しも運ばず。
邦彦王は非常に急ぎおられ困りおれり。
徳川は水野某に依頼し、水野が周旋しおるが、その手段は菊子の嫁する先を定め、その上にて酒井家より辞退する事と為すつもりの由なるが、これまで堀田正恒伯爵が地震にて妻を喪い子が4人あり。その後妻として菊子を談し込みたる人ありたる趣にて、渡辺暢が来りて事情を問い渡辺は既に朝融王との関係は絶えおる事に思いおりたる様子につき、自分より「その関係はいまだ絶えおらず。解除せらるる都合にはなりおれり」と言いたるに、渡辺は「この縁談は極秘密に為しありたるも、華族会館にても紅葉館あたりにても堀田がたいそう若き後妻をもらうとの談あり。堀田には4人も子があるに若き初縁の人が後妻に来るは、何か欠点あるにあらずやとの懸念もあるが、その辺は如何」と言うにつき、自分は結局「朝融王が嫌になりたりと言わるるにつき、これを解除せんとしたしと言うだけなり」と言い置きたるが、結局堀田の方より断りたる由なり。
また山階宮家に持ち込みたる人あるも、これは一言の下に拒絶せられたる趣なり。左の如き次第にて、婚約が成立したる後にあらざれば進行せざる事にてはいつまでかかるか分からず困りおる。
倉富◆酒井家の方より辞退する様になれば久邇宮家として好都合なるに相違なけれども、それは非常に無理なる事なり。予は久邇宮家より都合により婚約を解きたき旨を申し込まれ、その申し込みに対し異議なく承諾する事と為れば、双方とも格別の不面目なくして済む事と思う。
国分◆自分らもそれが相当の順序と思いおる。

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倉富日記 大正13年09月05日

徳川◆朝融王婚約解除問題も急に運ばずして困る。しかしやや端緒につきたる模様なり。
倉富◆菊子の嫁入先を内定したる後に解約する事に取り計うつもりの様に聞きたるが、果たしてしかるや。
徳川◆しからず。左の如き意見も無きにあらざりしも、自分は初めより絶対に反対しおり。
倉富◆しかるか。しからば嫁入先2ヶ所に交渉したる様に聞きおりたるが、それは何人の為したる事なるべきや。
徳川◆1ヶ所は実に驚きたり。あまり事情に疎き事なり。
倉富◆1ヶ所は予も実に驚きたり。堀田家の方にては種々詮索して見合わす事と為したる様に聞きおれり。
徳川◆山階宮家の事なり。
倉富◆その方はまったく驚きたり。
徳川◆一方が解決しても、第二段に至り新聞などにては必ずやまかしく言うならん。
倉富◆一方が解決したらば当分は第二の方に着手せず、世人が忘れたる頃に着手せらるる方がよろしけれども、左様なる訳にもいかざるべし。
徳川◆その方がよろしけれども、なかなか左様なる訳にはいかざるべし。

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倉富日記 大正13年09月06日

松平慶民が予と談しおる時、酒巻芳男が新聞切抜を持ち来り、徳川頼倫もまた来り。
予切抜き身たるに『かねて久邇宮朝融王と酒井忠正伯爵の妻の妹菊子と婚約ありたるが、この度突然宮家より婚約解除の事を酒井家に申し込まれ、これまで類例も無き事にて宮内省にては、宮内大臣・宮内次官・宗秩寮ら大狼狽を為しおる』旨を記しおれり。
徳川◆朝融王の事が新聞に出る事はかねて懸念しおりたり。婚約がいよいよ解除せらるれば必ず新聞に書くに相違なからんと思いおりたるも、解決前に新聞に出たる事は甚だ困る。この記事を取り消す事は出来ざるか、この後に掲載せざる様手回しするか否か問題なり。
倉富◆新聞に出たる事はいずれにしても解決を困難ならしむべし。予は君は菊子の嫁入先を予定する事を解約の条件とする意見なる様に思いおり、君が反対なる事は昨日初めて知りたり。
君が初めよりその意見ならば、なぜ今日まで解決できざりしや。あまり遅くなりおるにあらずや。
そのためついに新聞に出つる様の事になりたりと思う。
徳川◆酒井忠正が酒井家の相談人の意見をまとむる為に隙取りおるとの事なり。
倉富◆この問題は事実が久邇宮家の方より解約を望まるるにつき、久邇宮家の方より解約を申し込まれ、酒井の方にては異議なくこれを承諾することにて内議を為すが相当にあらざるや。しかるに久邇宮家よりは何とも言われず、酒井家の方より辞退せしむる様の交渉になりおる様に聞きおるが、それは余程無理なる事にはあらざるや。元来久邇宮家の方より婚約を望まれ、酒井家はこれに応じたるものなり。しかして今更これを辞退するには何か理由がなかるべからざるが、その理由はある訳なし。ゆえに久邇宮家の方より都合により婚約を解きたき旨を申し込み、酒井家にては異議なくこれを承諾する事とならば、双方とも格別体面を損せずして済むにはあらずや。酒井家の相談人が折り合わずとの話あるが、相談人は一通り人に対して説明する事のできる筋を立て置かざれば、旧藩士より相談人が詰責せらるる事ある為ならん。
徳川◆久邇宮家の方より表立って解約を申し込まるる事も出来がたし。しかし事実は久邇宮家の方より申し込まるるに相違なきにつき、その事は内緒に充分酒井可の方に通知しおくつもりにて、その事は自分が中に入る事を頼みたる水野より酒井の方に通しくれおる事と信じおりたるに、これまでに至りその趣意が酒井家の方に通じおらざることを聞き、甚だ遺憾に思いおれり。

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倉富日記 大正13年09月08日

倉富◆徳川は今日は出勤せざるや。
酒巻◆朝融王の問題につき奔走しおるならん。
倉富◆徳川が反対したるに関わらず、山階侯爵・堀田伯爵らに話を持ち込みたるは酒井家の方より為したる事なるべきや。
酒巻◆徳川より依頼しおる仲人水野の取り計いならんと思わる。
倉富◆解約前に左の如き事を為すはあまりに非常識なる事なり。堀田家などにては菊子は初婚にて年も若き者が子供まである堀田と結婚する事を望むは必ず何か弱点あるならんとの疑を起し、種々詮議したる趣にて、これはもっともの事なりと思う。予はこの事はまず久邇宮家より解約の希望を酒井家に申し込み、酒井家にてこれを承諾する事が順序なりと思う。しかるに反対に酒井家の方より辞退せしめんとするはあまりに無理なることなり。
酒巻◆その通りなり。

松平◆朝融王の問題解決したらば、朝融王に対し謹慎を命ぜらるる様の事は出来ざるべきや。
倉富◆事実は充分謹慎せられ、当分結婚などせられざる様にする必要あり。しかしこれは命令的にあらず自発的になされるべきものと思う。双方合意にて婚約を解きたる事となれば、表面はさほど重大なる問題と為すにも及ばざるべく、これに対し制裁を加えらるる事となれば、その程度も難しき事ならん。しかし実際にとうてい自発的に謹慎せらるる様の事は望み難きにつき、宮内大臣がこれを強制しても自発的の様にして謹慎せしむる事を要すべし。

徳川◆朝融王の婚約解除問題は、昨日仲人より酒井忠正に申し込み「久邇宮家にて菊子に充分の厚意を有せらるる事、婚約解除後も酒井家との交際を継続せらるべき」旨を告げたるところ、酒井忠正は大いに感激し「それほどの厚意あるならば当方より辞退する考えなり。できるならば明日には徳川まで事態の旨を申し出ずる事とすべし」との事なりし趣なり。
倉富◆しからばやはり酒井家より辞退する事なりや。
徳川◆しかり。
倉富◆予は碌を容れるべき事にあらざれども、予はやはり久邇宮家より解約を申し出し、酒井はこれに応ずるにあらざれば、事実に相違するのみならず、今日においても都合悪しからんと思う。
例えばこの件については既に御内意も伺い済みの事につき、貞明皇后より「なぜに婚約を解除するや」との御問ありたりとするに、宮内大臣はただ酒井の都合と言うのみにては奉答する事を得ざるべし。
徳川◆久邇宮家よりの申込とすれば菊子は嫌われたる事となり面目に関する恐れあり。
倉富◆それは表面酒井家よりの辞退としても、事実は公知の事なり。少しも菊子の面目を保つ利益なし。
のみならずある部分にては朝融王は不良少年とまでの評判あるぐらいにつき、その人より嫌われたりとて不面目となる訳もなからん。
徳川◆朝融王の謹慎を必要とする事は誰も同様に考うるが、如何なる方法を取りたらばよろしかるべきや。
倉富◆その方法も問題なるが、先刻の談に久邇宮家より菊子に充分の厚意を有せらるるとの事なるが、
単に厚意と言うのみにては何の効もなし。その厚意を表現する方法は如何なる事なりや。
徳川◆その方法は別に考えなし。

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倉富日記 大正13年09月09日

宮内次官関屋貞三郎の官舎に行き、朝融王婚約解除の事を議す。
予・関屋貞三郎・入江貫一・西園寺八郎・酒巻芳男・杉琢磨・松平慶民なり。
今後宮内大臣が事に当り、久邇宮家より解約を申し込まれ、
酒井家はこれを承諾する様の方針と為して進行する事と協議し家に帰る。

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倉富日記 大正13年09月10日

松平◆関屋貞三郎より宮内大臣の意見を問いたるところ、牧野は「徳川よりの報告あるまでは自ら手を下さず」との事なり。よりて関屋は今日徳川を訪い手を引かしむるつもりとの事なるが、関屋が負けてくるやも計られず。牧野は自ら事に当ることとなりても、まず久邇宮家に婚約を遂行する事を説き、それが行われざる時に至り久邇宮家より解約の申込を為す手段を取る事の考えなる趣なり。
倉富◆杉浦重剛は生前朝融王の婚約解除に賛成しおりたる様に聞きおる。
松平◆それは驚きたり。

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倉富日記 大正13年09月12日

松平◆弟徳川義親侯爵が先頃軽井沢にて水野・近衛文麿に会いたる時、水野が朝融王の婚約解除の周旋を徳川より依頼を受け、今年春以来08月まではそのまま手を着けず経過したる趣なる事を聞きたり。酒井家にては面目さえ立てば婚約を解くこととなりてもよろしと言い、その面目とは皇族か皇族より臣籍に降下したる人に嫁する事なる由。近衛なども淡白に「皇族に嫁せしむる途はなきや」と言いおりたり。
徳川の使いが関屋の家に来り「婚約解除の事は充分見込あるにつき、今しばらく待ちくれよ」と言い、関屋は種々これを詰問したる趣なり。
牧野はどこまでも婚約遂行説に傾き、一個の朝融王と言う如き問題にあらずと言いおりたり。
倉富◆今日に至り婚約を遂行する事は結局酒井家の方が勝ちたる様の事となるにつき、邦彦王は所詮承諾せられざるべし。牧野は先年の良子女王の関係あるにつき、此節に限り解除する事は矛盾のきらいあり。
それゆえ婚約遂行を主張し、裏面においては徳川の周旋にて解約でき、しかも酒井家の方より解約を申し出ずれば好都合と思いおりたるならん。しかし真実遂行を正当と思うならば、今日までなおざりに付き置きたるは解し難し。
松平◆今日にては遂行しても皇室には傷がつきたり。むしろ解約して朝融王は情願により臣籍に降下せらるるが一番良き解決方なり。

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倉富日記 大正13年09月13日

関屋◆昨日、一昨日徳川を訪い「朝融王婚約解除の事につき徳川の手にて運ばざるならば、その旨を申し出ずる様にせよ。早く解決する必要あり」と言いたるも、徳川は「婚約解除はきっと出来る見込あり。一週間などとは言わず両三日待ちくれよ」と言うにつき、「如何なる手段を講ずるや」と言いたるも、「その手段は言い難し」と言えり。貴官より徳川に談し手を引かしむる様の工夫はなかるべきや。
倉富◆予が談しても効能なかるべき。

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倉富日記 大正13年09月16日

東久邇宮聡子妃
邦彦王の妃は初めは細川侯爵家より行かるるはずになりおりたるところ、久邇宮家より故障を言われ遂に解約となり、その婦人悦子は一条実輝の妻となれり。その後良子女王の問題あり。また此節朝融王の問題あり。今まで3度の紛紜あり。世人が久邇宮家を相手にせざる様になるべし。

松平◆弟徳川義親侯爵が近衛文麿より聞きたる話には水野が徳川を訪い「水野の手にては酒井家の方より解約を申し込ましむる事は出来ざるにつき断る」旨を申し込みたるも、徳川が承知せず。水野は更に往訪してこれを説きようやく徳川も承知し、「しからば今しばらく時日があれば解約も出来るべきも、急なる事にては出来がたしとの条件を付けて宮内大臣に断る」事となりたりと言いたるゆえ、その旨を関屋貞三郎に告げ、関屋は「それは良き事を聞きたり。徳川より宮内大臣に会見の申込あり。辞表でも持ち来るならんと心配しおる所なるゆえ、その事を告げ置くべし」と言いたり。しかるに徳川が宮内大臣を訪いたる上の談は全く異なりたる事にて、解約の見込立ちたる旨を告げたりとの事にて、自分はまったく虚言を言いたる形となれり。

酒巻◆松平の談を聞きたりや。
倉富◆聞きたり。まったく分からず。
酒巻◆まったく分からず。


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倉富日記 大正13年09月25日

松平◆酒井家相談人武井守成の談によれば、父武井守正が酒井忠正に相談会を請求し、昨日相談会を開きたるが、酒井より「婚約解除の事は酒井家より申し出し難き旨を徳川へ明答したる」旨を報告し、久邇宮家または宮内省より公然解約の申込あればこれに応ずる事は一同異存なき事となりたる趣なり。

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倉富日記 大正13年09月27日

入江貫一
牧野は内大臣平田東助にも「この問題は酒井家の方より解約を申し出ざれば絶対に久邇宮家の方より解約する事は為すべきものにあらざる」旨を説き、西園寺公望にも同様の趣旨を説きおるとこことなり。
先日西園寺に会いたる時自分より「酒井家より解約を申し出ず久邇宮家に牧野より婚約遂行を進言しても久邇宮家はとうてい承知せられざるべく、久邇宮家より解約を申し込まるるかまたは宮内省にて解約の取り計いを為さば酒井家の方は承知すべきも、牧野自身はその取り計いを為す訳にはいかず。また久邇宮家より解約の申込を為さしむる様の事を為しては、宮内大臣の職責を違うべくいずれにしても牧野の進退問題となる懸念ある」旨を談したるところ、西園寺は「仕方がなきにあらずや」と言いおりたり。

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倉富日記 大正13年09月30日

酒巻◆入江貫一の談に、久邇宮家より金を出せば久邇宮家のための働くと言いおる者ある趣につき、
野村礼に「充分注意して、左様の者を関係せしめざる様に」談し置けり。
倉富◆またまた壮士を伴い酒井家を脅迫する様の事ありては大変なり。

入江◆久邇宮家より金を出せば云々の事は、前警視総監赤池濃の話に「久邇宮家に壮士が出入りしおり、その壮士は久邇宮家の為に親切を尽くすにあらず金を得る事が目的にて、金を得れば何事も為すべき人物なり」との話を聞き、これを関屋貞三郎に告げ、松平慶民が久邇宮付事務官に問いたるところ、「今日までは何事もなし」と言いたる趣なり。ぜんたい久邇宮家の事は困りたるもおなり。西園寺公望も非常にこれを心配しおりたり。
倉富◆久邇宮家の財政はよほど不足するならん。

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by oMUGIo | 2001-12-23 00:00 | 皇族
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